手術三日前の気持ち

妻が「手術こわくない?大丈夫?」と心配している。何度か訊かれた。

当日になってどう思うか分からないが、今のところ全く怖くない。
もし何かあって死んだり体が動かなくなってしまったら妻に悪いなぁとは思うのだが、それは恐怖というよりは、困っていると言った方が近い。
頭を開いて腫瘍を取り出すのだから大変な手術なはずだが、私はとても落ち着いている。

これを見て妻に悔い改められると困るのだが、私が平静であるのは、たぶん妻があたふたしているからではないかと思う。
いつも妻が子どもたちに「何やってんの!」と声を荒げているところに、「まぁまぁ」と行くのが私の役目なのだが、今回もそんな雰囲気である。
妻が右往左往しているところに「まぁまぁ、なるようにしかならないから」といなしているような感じだ。

もしこれが気丈な妻で「大丈夫よ。絶対治るからね」なんて言うタイプであったら、逆に私の方は不安になって「何かあったらどうしよう」とバタバタもがき始めるのではないかと思う。

つまり今は、私が感じるはずの不安や恐怖を、妻が一身に背負ってくれているのだ。

経過も結果も変わらないのだから、私自身はのんきにいられる方がいいはずだ。
妻のおかげで穏やかでいられるのだ。
妻には申し訳ないが、今のところあなたは元気そうなので私の代わりにあたふたしていただきたい。

すべて終わって気が抜けて具合が悪くなった時には看病してあげるので。